子宮腺筋症

症状

子宮腺筋症は30歳代後半から50歳代にかけて病変が大きくなり、症状が出現してきます。強い月経痛を引きおこしたり、月経量が増加し(月経過多)、貧血になったりします。月経時以外の下腹痛・腰痛や出血をおこすこともあります。また、子宮腺筋症の患者さまが子宮筋腫、子宮内膜症、不妊症を合併していることもしばしばあります。現代女性のQOLを著しく損なう病気の1つです。子宮筋腫や子宮内膜症と同じように、女性ホルモンの影響を受けて病気が悪くなりますが、閉経後には病変は縮小し症状も消失することがほとんどです。

診断方法

内診、超音波検査および腫瘍マーカー(CA125)測定が基本です。子宮筋腫との鑑別が重要ですが、両疾患は合併することも多く、MRI検査が必要な場合もあります。

治療法

貧血の場合、鉄剤や止血剤で貧血が改善する場合、月経痛や下腹痛も、鎮痛剤で症状が抑えられる場合にはホルモン療法や手術は必ずしも必要ありません。痛みが強い場合には、低用量ピル、GnRHの拮抗剤(アゴニスト)や黄体ホルモン剤(ジェノゲストなど)、黄体ホルモン放出子宮内システムなどで治療を行います。しかしながら子宮腺筋症を根治させる薬はありません。

GnRHの拮抗剤(アゴニスト)による治療では女性ホルモンの分泌が少なくなるので更年期様の症状がでたり、骨量が減少するおそれがあるため6ヵ月以上の治療はできず、治療終了後に再発するケースが多いです。ジェノゲストは長期投与が可能ですが、やはりエストロゲン低下作用を有するので、長期間服用すると骨塩量が減少する可能性もあり、特に若年者が服用する場合には注意が必要です。更に大きな子宮腺筋症の場合、ジェノゲストは出血症状を増悪させる可能性があります。漢方薬が有効な場合もあります。薬物療法が無効な場合や、薬の副作用により治療継続がむずかしい場合には、手術による治療を考慮する必要があります。子宮腺筋症の症状のためQOL低下が著しく、かつ、挙児希望がなく根治治療を望む場合には手術を行います。一般的に、子宮腺筋症の手術は子宮全摘術を指します。最近では腹腔鏡下手術が主流になっています。

妊娠出産を希望される場合は、対症療法を実施してそのまま妊娠・出産を考慮してもらいます。月経痛や月経過多が強い場合には、早期の妊娠をめざして不妊の検査や治療を行うことをお勧めしています。不妊治療として、体外受精・胚移植が必要になる場合があります。子宮を温存する手術として子宮腺筋症の病変のみを摘出する手術が一部の施設では行われていますが、再発も多く、また妊娠した場合も、子宮破裂や癒着胎盤などの周産期合併症の危険性が高まったり、帝王切開術が必要になったりなどの特別な注意が必要になるため、現時点では一般的な子宮腺筋症の手術にはなっていません。