外陰部のできもの・性感染症・帯下異常
外陰部にできるできものは病気のサインです。でも、痛みやかゆみを感じないできものもあり、 病気に感染していることに気づかないケースも多くあります。性感染症はセックスによってうつる病気のことで、大半がコンドームで予防できます。また、パートナーとともにしっかりと治療に取り組めば治るものがほとんどです。ただし、感染しても自覚症状のないものも多くありますので、定期的な検診を受けるよう心がけましょう。
尖型(せんけい)コンジローマ
主に性交渉によって、ヒトパピローマウイルス(HPV: Human Papilloma Virus)に感染して起こる代表的な性行為感染症の1つです。HPVの感染には、皮膚の表層の細胞ではなく深層の細胞への感染が必要なため、好発部位は性行為で表皮に損傷を受けやすい外陰部、腟壁、子宮腟部、肛門付近、尿道口です。また、潜伏期は3週間~3カ月です。
外陰ヘルペス
主に性交渉によって、単純ヒトヘルペスウイルス1・2型(HSV)に感染して起こる病気です。外陰部や腟に水泡、潰瘍ができ、疼痛、排尿困難、発熱、リンパ節腫脹を認めます。潜伏期は2日~1週間です。 また、一度感染してしまうとウイルスが体内に潜伏し、からだの抵抗力が落ちたときや、性交や月経等何らかの刺激があったときに再発することがあります。
クラミジア感染症
性感染症の中で一番多く認められます。 症状があまりないことが多く、感染に気がつかないため、罹患率が最近上昇傾向にあり、妊婦の5~8%、若い女性の15~25%が感染しているとされます。感染が進行すると、不妊症の原因となる卵管炎や腹腔内の癒着を引き起こすことがあります。潜伏期間は2~3週間です。
淋病
淋菌という病原菌が原因で、性行為(口による性行為も含む)によって感染します。クラミジア同様に生殖器だけではなく、口腔内に感染することもあります。また菌自体は非常に弱いもので、性行為による接触以外では、ほぼ感染しません。クラミジアと同じく、症状があまり出ないこともあります。症状としては、異臭のあるおりものが増える、発熱、下腹部痛がみられ、潜伏期間は3~9日間です。最近は抗生剤が効きにくい菌の増加も報告されています。
梅毒
最近、急増している梅毒は、トレポネーマ・パリダムという細菌に感染することで、全身に症状が現れる感染症です。性行為にともない感染する後天梅毒のほかに、胎児期に影響を受けることで現れる先天梅毒もあります。ここでは後天梅毒について記載します。
性行為にともない発症する梅毒は感染後の時期に応じて、第1期~第4期に分類されます。
- 第1期 (感染~3カ月):性器周辺や口、肛門などにしこりができることがあり初期硬結といいます。硬結部分に潰瘍が生じます。鼠径部リンパ節が腫れることもあります。
- 第2期 (3カ月~3年):手のひらや足の裏、体幹を中心に赤い発疹が現れ、バラ疹と呼ばれます。
- 第3期 (3年~10年):皮膚や筋肉、骨などに「ゴム腫」と呼ばれるゴムのような固さの腫瘍が現れるようになります。
- 第4期 (10年以降):中枢神経や大動脈にも影響が及ぶようになります。髄膜炎や脳梗塞、神経症状、心不全症状などを起こすこともあります。治療はペニシリンという抗生剤が使用されます。
トリコモナス腟炎
腟内にトリコモナス原虫といわれるものが感染して起こる性病です。悪臭のある黄色から淡い灰色、あわ状のおりものが増える、かゆみをともなうことから、比較的感染に気がつくことが多いようです。潜伏期間は3~10日間です。
カンジダ腟炎
おりもの異常を起こす病気の中で最もポピュラーな感染症で、「カンジダ真菌」というカビが異常に増えることによって発症し、強いかゆみをともない、酒かす様の帯下を認めます。 カンジダ真菌はもともと腟の常在菌で、抗生物質やピルの服用、抵抗力の低下により増殖します。 また「感染症」といっても、「性感染症」とは異なりますので、性行為がまったくなくても発症します。
HIV
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は血液や体液を介して感染するため、性的接触、輸血、針刺し事故、母乳、注射器の使いまわしなどで感染します。感染初期(急性期)→ 無症候期 → エイズ発症期の経過をたどります。感染初期にはインフルエンザ様の症状がみられることもありますが、感染者の体内の免疫応答により数週間で消失します。その後、無症候期に入ります。無症候期は数年〜10年以上続く人もいますが、感染後、短期間のうちに天性免疫不全症候群(エイズ)発症をする人もいます。HIVは免疫に大切な細胞であるTリンパ球に感染して、Tリンパ球は体の中から徐々に減少し、免疫不全状態となりエイズを発症します。健康時には発症しなかった弱いウイルスなどが病原性を発揮し、さまざまな病状が現れ、「日和見(ひよりみ)感染」などを起こしてしまいます。以前は、致死性の疾患でしたが、現在HIVを治すことはできませんが、薬によってエイズ発症を抑える事はできます。
バルトリンのう腫
バルトリン腺とは、小陰唇(しょういんしん)の付け根、腟口の側面にあり、性交時に半透明の粘液を分泌する腺です。セックスの摩擦や出産時など、何らかの刺激によってバルトリン腺が傷つけられたことが原因でバルトリン腺に分泌液がたまってのう腫となり、膨れ上がります。バルトリン腺に大腸菌やブドウ球菌、淋菌などが感染すると、赤く腫れて強い疼痛が生じます。
帯下・外陰異常一覧
症状 | 疑われる病名 |
---|---|
かゆみが強い | カンジダ トリコモナス |
痛みが強い | 性器ヘルペス カンジダ 接触性皮膚炎(かぶれ) |
腫れがある | バルトリン腺のう腫 |
量が多い・においがきつい | 非特異性腟炎 淋病 クラミジア トリコモナス腟炎 |
色が濃い | クラミジア 淋病 |
イボがある | 尖型コンジローマ |
性感染症の潜伏期
疾患 | 期間 |
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尖圭コンジローマ | 3週間~3カ月 |
性器ヘルペス | 2~14日 |
クラミジア頸管炎 | 1~3週間 |
淋病 | 1週間以内 |
梅毒 | 2~4週間 |
トリコモナス膣炎 | 3~10日 |
B型・C型肝炎 | 8~13週間 |
HIV感染症 | 4週間 |